2025-04-03
北海道アセットマネジメント株式会社 濵野社長インタビュー
北海道アセットマネジメント株式会社
代表取締役 濵野 恭義 様
代表取締役 濵野 恭義 様

- リートについて教えてください
- リート(不動産投資信託)は、日本語では不動産投資信託として知られ、投資信託という投資商品の一つです。
株式投資信託は、投資家から集めた資金を株式に投資して収益を分配するものですが、リートはその資金を不動産に投資し、その不動産から得られる収益を分配します。
大きな違いは、株式投資信託は企業の業績に影響されて株価が上下し、リスクも高いのに対し、リートは不動産に投資するため、比較的変動幅が小さく、ミドルリスク・ミドルリターンの投資商品となります。
リートにはいくつかの特徴があり、まず「上場リート」と「非上場の私募リート」があります。上場リートは証券取引所に上場しており、一般の個人でも自由に売買できます。一方、私募リートは機関投資家向けであり、一般個人は投資できません。北海道リートは私募リートとなります。
また、投資対象があらかじめ限定された「特定用途型リート」と、幅広い用途に投資する「総合型リート」があります。弊社は特定の用途にこだわらず、幅広い用途に投資する総合型リートです。
さらに、地域特化型リートもあり、弊社は北海道の不動産に特化した投資を行っています。他にも九州や東海道地域に特化した地域特化型リートがあります。 - 北海道リート設立の経緯を教えてください
- 私はもともと三菱UFJ銀行で働いており、2018年5月に札幌支店長として赴任しました。その当時、北海道では新幹線の札幌延伸や冬季オリンピック誘致、日本ハムファイターズのボールパーク建設、IR 誘致などの大規模なプロジェクトが発表され、北海道の開発が活発に進んでいると感じました。特に札幌の中心部では、築50年や60年のビルが多く、耐震問題や建て替えが必要で、再開発の動きが加速していました。
しかし、開発主体は道外大手企業であることが多く、地元経済への利益還元が少ないことに問題を感じました。道外大手企業は資本力があるものの、すべてをオンバランスで開発できるわけではなく、いわゆるリートとかファンドなどのオフバランスと言われる仕組みをうまく活用し、オンバランスで開発されるものとオフバランスで開発されるものをうまくミックスしながら開発投資をうまく捉えています。
残念ながら北海道にはそのような仕組みがないため、地元企業にも利益をもたらす方法が必要だと考えました。リートを利用することで、地元企業もビジネスチャンスを得られると感じ、北海道リート設立の構想を練り始めました。
その後、地元企業や自治体と協力しながらリート設立の構想を広め、徐々に賛同を得ることができました。そして、地元企業と共に北海道リートを設立することを目指して動き始めたという経緯です。 - 北海道リート設立で苦労したことはなんですか
- 北海道リートは他のリートと異なり、業界初の取り組みとなる特定の親会社に支配されない「共協同スポンサー型」という形態をとっています。
日本には現在約 115 前後のリートがあり、リートは投資家から集めた資金で成り立っていますが、その資金を目的外に使うことがないよう厳重に管理されています。
事務手続きなどは全て外部の信託銀行に委託され、経営は資産運用委託契約に基づいて資産運用会社である弊社(北海道アセットマネジメント株式会社)が行っています。
弊社と同業の資産運用会社に関していうと、大体特定の会社さんが大株主となっており、いわゆる親会社がいる形になっています。その親会社が資産運用会社を支配し、リート投資法人の経営にも関わるのが一般的です。投資家から見たら、投資の判断のところに親会社の信用力も加味されるというのが多くの同業他社となります。
それに対して弊社は、御社(株式会社土屋ホーム不動産)も含めて株主が20社あり、どこか1社が例えば55%持ってるなど、どこかの会社が親会社になっているということがありません。
そこが最大の特徴であり、リートが 100 以上ある中で、ほとんど全てが特定スポンサー型の中、唯一共協同スポンサー型という形でやっていますので、投資家の皆さんあるいは金融機関の皆さんから見たら、端的に言うと、共協同スポンサー型でこの事業が本当にうまくいくのかと懸念されました。
日本では前例主義が強いため、新しい取り組みに対して慎重な反応が多かったこともありましたが、北海道リートは親会社がいないことで様々な物件を広く扱い、地域に貢献できるメリットがあると説明し、ようやく2024年2月に運用を開始できたことは大きな成果でした。 - 座右の銘を教えてください
- 座右の銘というほどではありませんが、私は「人間万事塞翁が馬」という言葉が好きです。自分の人生を振り返ると、順風満帆ではなく、特に大学を出てからは挫折や失敗が多く、なかなかうまくいかないことが続きました。その時にこの言葉に出会い、自分の心持ちが楽になりました。
最初は不運だと思っていたことが、結果的には新しい出会いや新しい方向に繋がり、振り返ると「もしあの時、思い通りに進んでいたら今の自分はなかったな」と感じます。運命の転機は、必ずしも自分が望む通りではなくても、その後の成長に繋がることがあるのだと思います。
私は静岡県生まれで、北海道に関わることは全くなかったのですが、2018年に銀行の人事で北海道に来ることになり、今こうして北海道リートの立ち上げに関わっています。もし別の道を歩んでいたら、今の自分はここにいなかったと思います。そうした積み重ねがあって、今の自分があるのだと感じています。人生は導かれているような気がしており、強い意志で進んできたというよりも、気づいたらここにいるという感覚です。 - どのような20代、30代を過ごされていましたか?また、ご自身の経験から今の若者にアドバイスを送るとしたらどのような言葉を送りますか?
- 大学卒業後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社し、法人営業をしていましたが、最初はなかなかうまくいかず、評価も得られないことが多かったです。それでも、自分は明るく前向きに考え続け、「今はうまくいかないけど、将来は必ず実現できる」と信じていました。目の前のことを一つずつクリアし、前向きに取り組んできた結果が今に繋がっていると思っています。失敗してもすぐに別の道に進むのではなく、目の前の課題を一生懸命こなしていくことが大切だと感じています。
また、途中で道を変えたくなることもありますが、続けているとそこで居場所ができ、新たな目標や挑戦が見つかります。自分の信じる道を進み続けることが大事だと思っています。うまくいかなかった時期もありましたが、まだできることがあると自分を信じて続けてきました。
また、自分のためだけでなく、他者の役に立つことを意識してきました。出会いや縁を大切にし、その時には気づかなくても、後になってそれがプラスになることが多いと感じています。人との出会いを大切にし、日々意識して過ごしてきました。 - 趣味は何ですか?
- 今日の質問で一番困ったのはこの質問です。実は、はっきりとした趣味はないんです。よくある趣味、例えば山登りやキャンプ、釣りやゴルフなど、そういったものは特にありません。ただ、趣味というわけではないですが、休日の過ごし方が自分にとっての楽しみの一部かなと思います。
食事が好きで、食べることが楽しみの一つです。また、温泉に入ったり、スポーツ観戦をするのも好きです。自分でスポーツをするのはあまり得意ではありませんが、見るのが楽しいんです。
さらに、毎朝ウォーキングをしていて、これがリフレッシュの時間になっています。ストレスがたまりがちな日々なので、ウォーキングや温泉でのんびり過ごすことで気分転換しています。
明確にこれをやり続けているという趣味はないものの、日々リフレッシュできる時間を大切にしています。休憩時にはできるだけ仕事のことを頭から外すようにしていますが、完全に忘れることは難しいですね。それでも、極力仕事から離れるように心がけて、時間を過ごしています。 - 濱野社長が感じる北海道の魅力とはなんですか?
- 北海道の魅力について一番感じるのは、やはり「暮らしやすさ」ですね。私は東京に住んでいた経験があり、東京では夏が長くなり、春や秋が短くなっていると感じていました。通勤時間も長く、物価や住宅費も高いため、暮らしにくさを感じていました。
一方、北海道は冬が長いですが、それでも夏や春、秋もしっかり楽しめるので、四季を感じることができるのは北海道ならではの魅力だと思います。冬の寒さが厳しいと言われますが、私個人としては雪が積もっていても風が強くない日であれば、体感的にはそれほど寒くなく、東京のビル風の方が寒く感じることもあります。そのため、冬もそれほど厳しいとは感じません。
札幌は特に都会的な部分と自然がうまく融合しており、食事も美味しいので、総合的に見て暮らしやすい場所だと思います。リモートワークができる人にとっては、今後、移住や二拠点生活をする人が増えるのではないかとも思っています。 - 業界動向や今後の目標を教えてください。
- リートが日本に導入されたのは21世紀に入ってからで、まだ20年強の歴史しかありません。その間、リートの環境は金利の低さと不動産利回りの両面から非常に良い環境が続いてきました。
低金利環境で、資金の調達コストが低く、不動産市場も安定して推移しており、投資家がリートに投資しやすい状況でした。しかし、最近ではいくつかの要因でその環境に変化が訪れています。
まず、金利が上昇し始め、日銀がさらに金利を上げる可能性もあるため、リートにとってはマイナスの環境となっています。次に、不動産市場が引き続き高値で取引されており、リートとしてはできるだけ安く物件を購入したいのですが、現在の高価格はそれを難しくしています。さらに、建築価格が上昇し、新しい物件を開発する際にそのコストを賃料に転嫁しなければなりませんが、経済状況を加味すると賃料を上げるのが難しい状況です。このような状況で、リートが安定的なリターンを出すのは難しくなっています。
リートの市場はかつてのような追い風の状況から厳しくなってきています。今後は新たな特徴を出したり、投資家の裾野を広げる必要があり、資産運用会社や証券会社は新しい発想で取り組むことが求められます。
それでも、企業のオフバランスニーズは今後も増えると予想されており、これに応じたリートの利用価値があると考えています。企業は効率的な資本運用を求められており、バランスシートを大き
くせずにオフバランスで資産を活用したいというニーズがあるため、これを投資家のニーズと結びつけていくことで、まだ十分に成長の余地はあると思っています。
私たちの会社は北海道唯一の資産運用会社として、地域の企業や関係者と協力しながら、不動産情報を集め、マッチングを行うことで成長を目指しています。特に、共協同スポンサー型という新しい取り組みを通じて、地元企業と協力し、リートの利用価値を示しながら、地域にも貢献できるサイクルを作っていくことが目標です。
会社としては、安定的な運用ステージに持っていくために、少しずつ資産の規模を大きくしていくことが当面の目標です。将来的には、地域貢献や新しいビジネスモデルを追求し、成長を続けていきたいと考えています。 - 今後チャレンジしたいことはありますか?
- 個人としては、会社の成長に全力を尽くすことが最優先ですが、それが一定の成果を達成できた後には、さらに違った角度で北海道に貢献できるような取り組みもしていきたいと考えています。具体的に何かをしたいという明確な目標はありませんが、北海道や地域に役立つ仕事をしていけることが自分にとっての理想的な人生だと感じています。
北海道にはすっかり馴染んでおり、今後も永住して、この地域と関わり続けていけたら幸せだと思っています。